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2021-05-24 (Mon) 17:50

貞観政要

1、陛下はお言葉だけ聞きますれば古代の聖人にも勝る立派なご意見です。しかし実際は平凡な君主をも越えません。陛下は遠方に駿馬を求め、珍しい宝物を国外からお買い求めになり、戎狄(西方や北方の異民族)に軽蔑されています。これでは有終の美は飾れません。

2、陛下は軽々しく人民を労役にご使用になり、「人民は労役がなければ勝手気ままな行動をする」とうそぶいておられますが、古来そのような例はございません。

 このようなお考えでは人民を安定させることはできず、有終の美を飾ることはできません。

3、陛下は口先では人民のことを心配するということを絶えずおっしゃっていますが、実際はご自分を楽しませることに実に熱心で、忠臣の諫めをお聞きになりません。これが有終の美を飾ることができない理由の三番目です。

4、陛下はかつては君子を敬愛し、小人を遠ざけておられましたが、今では君子を重んじるとは言うものの実際は敬して遠ざけておられます。小人を軽んずるといいながら実際は慣れ親しみ近づけておられます。有終の美を飾ることができない理由の四です。

5、陛下は珍しい品物を好まれ、手に入れがたい時にはどんな遠方からでも手に入れようとなさいます。上のものが贅沢を好みながら下の者には純朴な生活をするように希望してもできることではありません。有終の美を飾ることができない理由の五です。

6、陛下は表面だけを見て人物の善悪を判断しておられます。そもそも小人は人の悪口を好むものです。これでは能力のないものが次第に進み出ることになり、正しい道を守るものが遠ざかります。有終の美を飾ることができない理由の六です。

7、陛下は朝暗いうちから狩猟に出掛け夜になってからお帰りになります。あまりに頻繁にお出かけになるのを人民に非難されたり、鷹や猟犬を四方の異民族からも求めておられたりしております。これでは何か変事が起こってからではお救いできません。有終の美を飾ることのできない理由の七です。

8、陛下は臣下たちに対する態度がだんだん粗略になり、地方官が現地の様子を報告しようとしても会うこともできず、会えてもお取り上げになりません。そして突然小さな過失をお取り上げになり難詰なさいます。これでは上下の心が一致し、君臣が共に安泰であることは困難です。有終の美を飾ることができない理由の八です。

9、陛下は近年、少し威張ってわがままにふるまうことがあります。まるっきり政治に関心を持たず、遊ぶことだけに興味をもち、しかもいくら遊んでも満足することがありません。自らの功名に関心があり、無意味な遠征軍を派遣して民を疲弊させておられます。有終の美を飾ることができない理由の九です。

10、陛下はいたずらに人民に労役を課し、そのために人民は疲弊しております。何かの弊害が起こればわずかのきっかけでも人民は騒動を起こしやすくなっております。有終の美を飾ることができない理由の十です。

 これらのうち一つで改めてくださるのなら、私は死刑になっても本望です。

 このような上奏文が奏上されて、太宗皇帝は心中穏やかではなかったはずですが、かろうじてこのように魏徴に語って言います。

  君主の心に順うことを言うのは容易いが、君主の心に逆らう諫言をすることは最も難しい。公は思慮深く朕を支えてくれる。朕も有終の美を飾りたいと思う。公から朕の過失を聞いたので必ず改めて見せよう。そうでなければ公に会わせる顔がない。


 このようなことを言った魏徴も立派ですが、それを聞き入れた太宗も立派です。小さい幼稚園の園長ですが、以って座右の銘とすべき言葉です。もっともこれで太宗の行状が完全に改まったというとそうとも言い切れなかったようです。

 でしょうね。だって人間だもの。


2021-05-24

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