fc2ブログ
Top Page › 未分類 › 虐待事件に寄せて
2022-12-17 (Sat) 08:39

虐待事件に寄せて

 保育所などでは11時間の保育を「保育標準時間」、8時間の保育を「保育短時間」と呼びます。一日の半分近くも保育園に預けられていては子どもたちの心身になにがしかの影響が出ても仕方がありません。もちろん保育園の団体などからも長時間保育については反対の声はあるようですがニュースなどではあまり聞こえてきません。これは日本の貧困な子育て政策のつけで、フィンランドに研修に行ったときにフィンランドでは10時間の預かりが最長で、それを超えざるを得ないような働き方をさせた場合は事業所が罰せられるということを聞きました。今でもそうなのかはわかりませんが日本の預かりの時間の長さは異常です。
 今は大規模な規制緩和によってさまざまな種類の保育施設がそれこそ雨後の筍のように増えていますが、特に新設の保育施設はその常として十分なおもちゃや遊具がありません。それに加えて今増えている園庭のない保育施設においてはどうやって遊んでいるのだろうと不思議でなりません。2才までの子はまだそれほど広い遊び場は必要でないのでまだ良いです。3才以上になると遊びが集団的になって活動範囲が飛躍的に広まります。
 そのような状況で子どもの自主性に任せていると確実に戦いごっこが始まります。おもちゃの取り合いから始まって戦いごっこが日常茶飯事になる可能性があります。
 まず子どもたちの争いをとめなければならない。子どもたちに怪我がなく保護者に引き渡さなければならない。その他の教育的な側面は2の次になってしまう。先生たちがくたくたになるのもわかります。
 それなのに行事までこなすのは、それは無理だろうなと思います。
 長時間の保育は子どもたちにとってストレスフルだとは思っていましたが、先生たちにとってもストレスフルだというのは今回の事件を通して恥ずかしながら初めて知りました。
 だからと許される事柄ではないので加害者をかばうつもりは毛頭ありません。ただ制度のひずみは今回の事件とは関係なく検証しなければいけないことかなとは思います。
 この頃すっかり見慣れたてぃ先生が行事について言及していましたが、幼稚園と保育園は分けて考えていただきたいと思います。
 行事は幼稚園にとっては大切な教育の要素です。それがなければ多くの幼稚園でその存在意義の結構多きな部分が損なわれるのではないかと思います。
 幼稚園は預かり保育の子どもたちを除いて、だいたい午後2時くらいには子どもたちから解放されて翌日やその他の仕事を行います。
 これはとても大切なことです。幼稚園も保育園のほとんどの先生は子どもが大好きです。それでもあまり長い時間一緒にいると逆にストレスを感じるようになります。
 一日に一度は気分の切り替えができることは幼稚園で働くことの大きなメリットです。
 子どもたちの成長はもちろん行事だけではありませんが、行事は特にそれを通して子どもたちが成長するものであり、それを指導することで先生も成長します。また、保護者の皆様にとっても行事を通して子ども成長を実感し、それが子育ての励みになり、それによって子どもの成長が促進するものであろうと思います。
 長いコロナ禍で行事が制約される中で実感したことです。
 もちろん今までの幼稚園のあり方の中でこれは本当になくてはいけないことなのかというのはあります。あった方がいいね、が優先して結果として行事などが際限なく増えてきた側面は否定できません。それらは精選する必要はあります。また先生たちの働き方も改善する必要はあると思います。
 風通しが良くて働きやすい職場は職員のパフォーマンスが上がると言います。
 最近は遺伝子の研究が進んできて人の能力の大半は遺伝によって決まるともいわれています。
 一方でノーベル経済学書を受賞したヘックマンらの研究では人の能力や資質は幼児期にほぼ確定し、就学後はあったとしてもわずかだという研究結果もあります。
 この両方が正しければ遺伝による能力や資質をくつがえしてより高いパフォーマンスをえるのは幼児期ワンチャンスということになります。実際には能力とは何か、才能とは何かという根本的な部分を含めてそれだけではないとは思いますが、幼児期がとても大切なのはその通りだと思います。
 日本の従来からの幼児教育や就学後の教育について、詰め込み教育(ではなかったと思っていますが)でこれからの世界では役に立たないという人がいます。乱暴で実態を見ない意見です。
 日本人の学力は幼児期、学童期、その後の学生期、大人になってからを通して先進国中でもかなり上位の方にあります。特に成人後の学力は先進各国の中でもとびぬけています。多くは詰め込み教育といわれる教育を受けてきた人たちです。
 また、欧米人と比べて創造性に乏しいという傾向もデータを見る限り今のところありません。
 唯一自己肯定感の低さはかねてより指摘されていますがこれには別の見方もあります。
 日本は文化として控えめな方が好まれます。スポーツ選手のまず反省から始まる話し方もそうです。日本は自信満々でまず目立たなければ生きていけない社会ではないからですね。
 それに日本人はそれほど自己否定的ではないという研究もあります。
 たしかに日本人はあれもできていない、これもできていないと、できていないことをあげつらう傾向がありますが、できなかったのは努力が足りなかったからだと思う傾向があるそうです。努力が足りなかったというのは努力すればできるということでもあります。
 欧米の人の一生や能力・学力ははじめから決まっているから頑張っても無駄と考えやすい傾向とは大きく異なります。
 行事等で「やった、できた」という経験を積み重ねてきたからだと思います。
 最近では保育施設・幼児教育施設で英語のネィティブの先生のレッスンを取り入れるところが増えていますが、ネィティブの先生を派遣する会社の大きな悩みの種は歌が歌えないことだそうです。
 日本人が歌が上手なのは日本の幼稚園ではなにかというと歌を歌う。幼児教育が歌とともにあるからではないかと言ってました。
 手前味噌で恐縮ですが日本の幼稚園は結構「いけてる」のではないかと思います。

2022-12-17

Comments







非公開コメント